精神科専門療法の損益分岐点分析

第13回日本精神科病院協会学術大会 スライド発表資料


【目的】医療は労働集約型の産業である。特に精神科病院はそれが顕著だが、近年の人手不足の中で、医療収入を上げるためには労働投資効率の良い診療報酬項目に人員を集中的に投入し収益を上げる必要がある。経験上・感覚的に投資効率のよい項目を推定できるが、実際どの程度の利益になるかを知ることは重要である。「日本精神科病院協会総合調査報告」(以下、報告書)に、職種別賃金などが詳細に報告されている。それを基に人員が専従要件になっている精神科作業療法などの精神科専門療法の労働投資効率を分析することを目的とする。

【方法】施設基準の人員配置と報告書の職種別賃金費からそれぞれの項目に対する人件費を導き出し、それを固定費とし損益分岐点を求めた。変動費については加味していない。また、精神科訪問看護・指導料、入院精神療法、通院精神療法に掛かる人件費と点数との比較を行った。

【結果】損益分岐点から、デイ・ケア(小)、ショート・ケア(小)などは8~9名であり、精神科作業療法、デイ・ケア(大)は10.5名程度、ショート・ケア(大)は14.4名である。この数値が利益を生む最低人数となる。数値が低ければ採算ベースが容易であり、高いと採算にのるのが困難なことを意味している。損益分岐点を超えて患者1人増すごとの利益幅はデイ・ナイト・ケアや重度認知症デイ・ケアが大きい。精神科作業療法は、患者の1人の増加が利益増加へあまり直接的に結びつかない。また、算定患者を最大とした利幅は、デイ・ケア(大規模)が年間6,000万円、デイ・ナイト・ケアが4,500万円、精神科作業療法が1,900万円で、ショート・ケア(大規模)が400万円程となっている。精神科訪問・看護は単独・複数、職種別に限らず実施件数が1日5名程度を超えないと採算ベースにのらない。医師の人件費は入院料、初再診料などに含まれ、精神療法のみで判断できないが、精神療法は人件費に見合った額とは思われない。

 

学会発表スライド(PDF)